年末年始のニュース

昨年末は、秋田県にかほ市が「ふるなびクラウドファンディング」を活用して、最終的に目標の826%を達成したという話題が届きました。

昨年末、開始早々に目標額の2,000万円を超える7,500万円が集まり

秋田魁新報
にかほ市のスケボーパーク整備費、ふるさと納税で7500万集まる 目標額の3倍超

今年の1月、最終的に1億6千5百2十5万6千800円の寄付金が集まりました

ふるなびクラウドファンディング
子どもたちや初心者が気軽に楽しめるスケボーパークを整備します!

寄付者は延べ4,000人を超え、その99%が県外在住者からの寄付だったということもあり、今後は県外からのスケートパーク来場者が期待され、地方の活性化にもスケートパークは確実に影響を与える施設と捉えられるようになりました。

秋田魁新報
社説:スケボー施設整備 期待に応えにぎわいを

日本と世界におけるスケートボードの歴史と動向

日本は、スケートボード発祥の地であるアメリカやオーストラリア、ヨーロッパ諸国と比べてスケートパーク後進国です。

この事は、利用者にとっても非利用者にとっても、日本という国の環境そのものがストリートスポーツに向いていないと受け止められていたり、他国に比べて劣っていると感じていたり、悪い面が目立ってしまうようなネガティブな報道がなされていたりと、様々な要因があると考えられます。

しかし、私たちは、スケートパーク後進国だからこそ、活かせる利点がたくさんあると考えています。

例えば、発祥の地アメリカにおいても1960年代から2023年まで、約60年のスケートボードの歴史の中で様々な公共や民間のスケートパークが造られてきました。子供や若者はもちろんのこと、長年手軽に楽しめる特徴を活かして60歳を超えるスケーターも沢山います。また、初期費用や維持費用が安価なこともあり、貧困層から富裕層まで誰もが同じ場所で公平に楽しめるため、利用者はどんどん増え続けています。今日ではアメリカ全土に約3,500のスケートパークがあります。(トニーホーク財団2022年調べ)

しかし、アメリカをはじめとする諸外国においても「スケートパークを造りさえすれば迷惑な路上利用や破壊行為、禁止場所での利用が無くなる」という訳ではないことが、これまでの約60年の歴史の中で、利用者と非利用者の双方共に理解している事実です。例えば、スケートボードの用品製造・販売メーカーや、スケートボード関連アパレルメーカー、シューズメーカー、スケートボード競技において活躍している有名選手等による、YoutubeやinstagramなどのSNS宣伝媒体の広告が、この事実を広く世界に伝えています。

論座
スケートボードパークの整備不足が、子どもたちを夜の商店街に追い込んだ

2023年も、各地に公共民間スケートパークが増える見込みです

これまでのスケートボードの歴史と、スケートパークの歴史を振り返りながら、世界で初めてオリンピックの競技として、スケートボードの大会を開催した国=日本において、2023年これからのストリートスポーツ展望を考えられる。というのは、スケートパーク後進国である “日本だけが見ることの出来るメリット” です。

少子高齢化が進む日本において、これからもどんどん子供たちの数は減り続ける見込みですが、世界的に見てもまだまだ日本の人口は非常に多い。というのが現実です。経済問題や社会福祉問題は今後も困難を極めることが確実ですが、その日本の中でも、私たちは生きてゆきますし生まれてきます。

今後、日本では、運動部活動の生徒数は減ることが予想されています。

スポーツ庁
『30』年後には運動部活動の生徒は半減する?!

そうした中で、活力のある子供たちや若者は、団体スポーツではなく、個人スポーツや、気軽に何時でも始められて何時でもやめることができるストリートスポーツを利用する機会が増える事が見込まれます。そのため、利用施設数の圧倒的に少ないスケートパークは、今後も各地に設置されます。

日本のメリットを最大限に生かすために

これまで、各地で発展してきたスケートボード(利用者層)と、各地域にお住いの一般住民の方々(非利用者層)との問題が軋轢となり「ストリートスポーツ=困難なモノ」として多くの方々に受け止められてきましたが、だからこそ、今がスケートパーク後進国である “日本だけが見ることの出来るメリット” を活かすチャンスなのです。

各国・各地で起きている既知の問題点をよく観察すると

  • なぜスケートパークが無いと近隣の路上で迷惑行為が増えるのか?
  • なぜスケートパークを造っても夜間の商店街や禁止場所での利用が減らないのか?
  • なぜコンクリートベタ打ちのスケートパークには初心者が入りづらいのか?
  • なぜ競技性の高いスケートパークを造るとスパルタンな親が子供に叫び声をあげて怒鳴るのか?
  • なぜ郊外のアクセスの悪い場所にスケートパークが造られるのか?

利用者、非利用者共に上記のような疑問が出てきます。

私たち、日本スケートパーク協会は、これらを含むまだまだある様々な問題を解決しながら、ストリートスポーツが携えている大きすぎる魅力を最大限活かし、地域の活性化と地域の治安維持の両立を図りながら、より多くの日本人と日本にお越しになるビジターの方々に、日本の持ている本来のポテンシャルを明示し、日本のスケートパークという形にして示したいと考えています。

今後の日本のストリートスポーツ発展に必要なこと

今後数年で、数百のスケートパークが日本国内に出来る見込みです。

しかし、アメリカの有名パークを真似たようなコピーパークをいくら作っても、スケートボードが抱えている諸問題は60年経っても解決できないことが分かっています。

つまり、日本には日本独自のスケートパーク設置へのアプローチが必要であり、スケートパーク後進国である “日本だけが見ることの出来るメリット” を活かし、各地で起こっている諸問題を分析した上で数値化したエビデンスを整え、世界でもまだチャレンジされていない、全く新しい視点でストリートスポーツ全体を捉え、利用者と非利用者層の軋轢を緩和できる施設を整備する必要があります。

そのためには、日本で暮らし日本を末永く愛してゆきたいと考えている、多くの皆様の知恵と力とやりきる勇気が必要です。

今年も全力で「新しいアプローチのスケートパーク」を造ってゆきますので、楽しみにしていてください。

地方公共団体、首長、議会、設計事務所、ゼネコンの皆様へ

ストリートスポーツをする場所を造るということは=波のある海や斜面のあるスキー・スノーボード場を創る感覚に似ています。

つまり、全く同じものが2つある事は考えられませんしわざわざ造る意味がありません。

海の波は、吹く風や潮の満ち引きによって初心者が楽しめる波から上級者でも危険を伴う波まで、様々な大きさや形に表情を変えます。
斜面に堆積した雪は、その量や地形によって同じく、様々な大きさや形に表情を変えます。

そして、海や山には、実際に自分が入らなくても観覧できる場所や休憩できる場所がたくさんあり、利用する人々はその日その時の気分や体調を吟味しながら、新しくチャレンジしたいことに取組むために、また、確実に身に付けたい技術を繰り返し練習することで、出来る出来ないにかかわらず自分の意思決定に少しずつ納得しながら自分自身の成長を楽しみます。この成長は、もちろん心身の成長と多くの成功体験を伴います。

ストリートスポーツに、同じ利用者や観覧する人や休憩している人が「上手い下手にかかわらず取り組んでいる人をたたえる文化」が根付いているのは、それぞれの距離感が近く、お互いにフラットな関りが持てるからです。

このフラットな関係を持てる理由の根底にある「モノ」を説明するのに最も分かりやすいのは、例えば指導的立場といった特別な存在や上下関係を目上の者が利権のような形で築こうと試みても、年長者ほど体力の衰えが早く、長年続ければ続けるほど明らかに若者より体力が落ち、出来た技が出来なくなったり、技の切れが悪くなったりするので、いつまでも偉そうに目下の者に振舞い続ける事が出来ないという、非常に有り難い「世代交代という秩序の変遷」がストリートスポーツ全体に安寧をもたらしていると考えられます。

このようなことから、スケートパークは、スケートボードやストリートスポーツをある程度した事が無いと造ることはできませんが、だからといって長年取り組んでこられたレジェンドなどと呼ばれる著名な利用者の強い意見を中心に考えただけでは、新しく生まれてくる利用者や初心者が末永く楽しめるスケートパークにはなり辛い。という側面があります。

もし、新しくスケートパークを造る計画や、既存のスケートパーク改修、地域の活性化、スケートボードやストリートスポーツに関連する諸問題を解決したいと考えておられる場合は、是非お気軽にお問い合わせください。

本年も宜しくお願いいたします。

当協会が遂行する業務に対する考え方を示唆している第三者による学術論文および考察紹介

公共空間における社会的排除とライフスタイルスポーツ(2019年)
――京都市のスケートボーダーを事例に――
Social Exclusion and Lifestyle Sports in Public Spaces:
A Case Study of Skateboarders in Kyoto.
松本 優希(京都大学・院)
MATSUMOTO Yuki (Graduate student, Kyoto University)
キーワード:公共空間,社会的排除,ライフスタイルスポーツ,スケートボード
Keywords:Public space, Social exclusion, Lifestyle sports, Skateboard

目撃者の意識からみた公共空間での特定利用形態に対する寛容性の探索的検討(2022年)
-スケートボードをケーススタディとした公共空間利活用-
An exploratory study of the tolerance of specific usage in public spaces by witnesses
– Utilization of public space with skateboarding as a case study –
笹尾 和宏*・大庭 哲治**
Kazuhiro Sasao*、 Tetsuharu Oba**
公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.57 No.3, 2022 年 10 月
Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.57 No.3, October, 2022

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